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「Perla Nera 森の黒真珠」

※このコラムは、長年イタリア各地へ料理修行に通うイタリア家庭料理研究家 山中律子さんが、イタリアの郷土料理や食文化に触れながら、INAUDI商品を掘り下げる特別コラムです。

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「瓶詰めなのにガチ」を貫くイナウディ社の隠れた真骨頂。

「Perla Nera 森の黒真珠」

良質なイタリア産のトリュフやポルチーニを始めとしたキノコ類を主力商品とするイナウディ社だけに、これらを贅沢に使用した瓶詰めのラインナップは実に豊富である。
今でこそ、ポルチーニやトリュフといった高級品も、日本ですっかりお馴染みの食材になり、トリュフ塩やトリュフオイルといった加工品の類いもたくさん流通しているけれど、イナウディ社のものは、どれもこれも高いクオリティの素材だけを惜しみなく使用しているのが大きな特徴。この「瓶詰めなのにガチ」なところが、本国イタリアで長く信頼され続ける理由なのだと思う。
このPerla Nera(イタリア語で黒い真珠の意味)もその一つ。
イタリア産の選りすぐりの黒トリュフとマッシュルーム、そして黒オリーブ。この3つが絶妙の配分でなめらかに裏ごしされた黒く輝くペーストを「黒真珠」とはよく言ったものだ。

ところで、白トリュフの名産地といえばピエモンテ州だが、黒トリュフの産地として真っ先に挙げるべきはイタリア中部のウンブリア州ではないだろうか。秋ではなく夏にとれることからサマートリュフとも言われ、白トリュフほど高価ではなく、香りも強すぎないため、もったいぶりながら擦りおろして料理にトッピングするというよりも、ダイナミックに加熱調理されることが多い。
特に有名なのが、ノルチャ地方のパスタ料理。ノルチャ地方では古くから豚肉を加工する技術が栄え、中でもサルシッチャは町の名物、ここからサルシッチャをリコッタチーズや生クリームと和えたクリーミーなパスタのことを「Pasta alla Norcinaノルチャ風パスタ」と呼び始めたと聞くが、今では同じく土地の名産である黒トリュフもこのパスタ料理に欠かせない材料とされるケースがほとんど。それどころか、サルシッチャ抜きで黒トリュフのパスタのことをノルチャ風という地域もあるくらいだ。

同じ州内でもさまざまにアレンジされた「ノルチャ風」があるのだが、私にとってのNo.1は、ウンブリア州のとある山奥で、中年男3兄弟が営むアグリツーリズモで習ったもの。
厨房の担当は長兄のパオロ。料理のほとんどが自給自足で、広大な敷地で野菜を育て、家畜を飼い、裏山でキノコやトリュフを狩る。パスタももちろん手打ちで、産み落とされたばかりの卵でストランゴッツィというウンブリア独特の、太麺ロングパスタを練る。
ノルチャ風は宿の名物料理とあって、毎回必ず登場するのだが、パオロのそれは、サルシッチャ、黒トリュフ、生クリームいうオーソドックスな材料のほかに、アンチョビと採れたてのいろいろなキノコ、そして、なんと黒オリーブが入る。
すべてみじん切りにして煮込まれた材料は、黒いかけらのそれぞれが一体なんなのか視認できないまま、しかし、太い手打ちパスタと絡めて口に運ぶと、黒トリュフの芳醇な香りの後に、追随するようにサルシッチャという肉の塩気、アンチョビという発酵食の塩気、山のキノコたちの旨味が押し寄せて…そして、この一見、とっ散らかりそうな食材たちをとりまとめているのが、実は黒オリーブのまろやかな旨味と酸味が果たす包容力にあることに気づく。絶妙な足し算と引き算と掛け算の答えは、ああ、何物にも変え難い味わいだ。
パオロの作る「ノルチャ風パスタ」は、彼の長年の経験値から編み出した材料が見事な配分で結実した、もはやパオロ風パスタと言った方が正しいのかもしれない。

さて、なぜここまでパオロのつくる唯一無二のノルチャ風パスタの話を熱弁しているかというと、この「Perla Nera 森の黒真珠」が、それにものすごく近いパスタを再現できる魔法の瓶詰めであることに気づいたからだ。
それ以外の材料は身近で手に入るもので構わない。サルシッチャが手に入らなければパンチェッタやベーコンでもいい。イタリアのキノコを手にいれる必要など全くなく、スーパーで売っているもので十分だが、ポイントは、できるだけいろいろな種類のキノコ、つまり、椎茸、エリンギ、ひらたけ、舞茸といったものをミックスして使うこと、そして原型を留めないほど細かいみじん切りにすること。キノコは多種類を混ぜるほど風味が豊かになるし、なんといっても、「Perla Nera 森の黒真珠」の中の黒トリュフと高級マッシュルームが、日本のキノコたちを瞬時にして巻き込んでイタリアの味に化けさせてくれる。そしてここでも、黒オリーブがすべての材料それぞれの、足りないところを補完して、出すぎるところを抑えてくれるのだ。
という具合に、黒トリュフ、キノコ、そして黒オリーブ。この、どれかひとつ欠けても成立しない「森の黒真珠」だが、ふと、ボトルネックのPOPを見ると、イタリア語のサブタイトルが「Salsa con Funghi e Tartufi」=「キノコとトリュフのソース」とある。
えー、黒オリーブこそ大事な脇役なのに!ここだけは唯一、イナウディ社に一言申し上げたいところ。

さておき、イタリアの本物の素材だけを詰め込んだ「瓶詰めなのにガチ」なイナウディ製品。いわずもがな、そのまま食べても文句なくおいしい。けれど本物の素材だけが入った瓶詰めだからこそ、むしろ料理の「食材」としてさまざまに応用することで、本場の味に限りなく近い料理を作ることができる。それこそが本物の証なのではないかと、イナウディ社の瓶詰めを開けるたびに思うのである。




イタリア家庭料理研究家・コピーライター・地域活性化アドバイザー  

山中律子

※森の黒真珠の商品紹介はこちら
※森の黒真珠を使った山中さんのレシピはこちら

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